南アルプス南部縦走(千枚岳・荒川三山・赤石岳・中盛丸山・小兎岳・兎岳・聖岳)

南アルプス南部縦走 (1974.8.11〜15 自炊小屋泊まり) 単独行

 白峰三山を縦走したときに、南の方向に大きな山容の塩見岳 更に荒川・赤石・聖という3000mの重量級の山々が静かに連なっているのを眺めて、
いつかはあの奥深い山へ入りたいと思っていた。

 白峰三山を登った翌年の夏 早速その想いを遂げるために一人でこの南部の山々を縦走する計画を立てた。
塩見岳は離れているために諦め、荒川三山・赤石岳・聖岳の縦走。アプローチが長い 山小屋が少ない、そして当時は全てが素泊まりだけの山小屋。
素泊まり4泊5日の縦走。食料・炊事道具とシュラーフ等々 必要最小限に切り詰めても30キロの重さ。

1日目(8月11日)
 朝の4時に自宅を出て静岡経由で畑薙第一ダムに着いたのが、昼の12時半。
静岡駅から畑薙第一ダムまでバスは観光地を回ったり運転手の休憩も入ったりで4時間も。

出発地の畑薙第一ダムから宿泊場所の椹島まで大井川林道を延々と更に4時間半:15キロも歩かなければならない。
とにかく夕方まで着けば良いのだからとズッシリと肩に食い込むキスリングを担いで歩き始めた。
真夏の陽射しが暑いので Tシャツ1枚に短パン。 林道は一般車は通行止めだが、タクシーはOK。

タクシーで行っても良かったのだが、何か勿体無い気がして歩いた。
幸か不幸か快晴の天気。真夏の太陽がジリジリと照りつけて、汗びっしょりになり木陰のないダートの林道をテクテク。
変化のない平坦な林道を歩き続けるのは疲れる。
途中登山者数人を乗せたタクシーがやって来て、運転手から「安くしとくけど乗って行かないか?」と誘われたが、断って歩き続けた。

 歩き始めて2時間ほど経った頃 昨夏穂高でのと同じように足の裏に痛みが来た。
登山靴が悪いのか、歩き方が悪いのか、平坦な道を歩き続けると足の裏が傷んでくる。さっき追い越して行ったタクシーに便乗すれば良かったかな?と後悔し始める。
 足の裏を庇うようにそろりそろりと歩いているとき、一台の車がやって来る。
ここは崖崩れや路肩が危険なので一般の車の乗り入れは禁止なのだが…と思いながら立ち止まってやり過ごそうとしていると、
停まって「乗って行きませんか?」と一人の若い登山姿の男性に声をかけられる。「ありがとうございます」と渡りに船とばかりに二つ返事で乗り込む。
やれありがたや。よほどくたびれて乗せて欲しそうな顔をしていたのかも知れない。
椹島にはまだ2時間以上もかかったのに、わずか40分 夕方の4時に着くことが出来た。

 椹島の小屋は、東海パルプの施設〜林業の従業員用かな? で夏のシーズンだけ登山小屋になるようだ。
樹林に囲まれた平坦な場所にすっきりとした清潔な小屋。 40人ほどが泊まれる中央に土間の通路があって両側が茣蓙を敷いた作り。
素泊まり小屋特有の作り。これだと外へ出なくても目の前の土間で自炊が出来て便利この上ない。

夏休みなのに宿泊者は5人。静かで快適そのもの。全員が単独行者、余計なおしゃべりをする人もおらず、黙々と荷物の整理をしたり、食事の準備をしたり。
やはり南部の山へ登る人は違う。この静かな奥深い山を求めて来た人だ。夕方小学生ほどの女の子を連れたオバサンが料金を徴収に来る。
東海パルプで働いている人の家族かな。夕食を食べて日暮れと共に眠る。夜中に夢うつつで雨の音を聞く。

2日目(8月12日)
 翌朝 雨は上がっていたが、今にも降り出しそうなどんよりの曇り空。
「まあ 曇りの方が暑くなくて良いや」と5時に出発。 千枚小屋まで7時間の登り。いよいよ本格的な登り、荷物が重いこともあって樹林の中をゆっくりゆっくり登る。
小石下まで約2時間、蕨段に着いたのが登り始めてから3時間半経過した9時。 とうとう雨が降りだして来る。それほど強くなく小雨。
雨具を着て湿度100%と思われるジトジトした樹林の中をゆっくり登る。
それほどのきつい登りはない。このコースは人気のないコースなのか、登る人も降りて来る人もいない。
この南部はもともと登山者が少ないのかも知れない。椹島の小屋に泊まった人はどこへ行ったのだろう?二軒小屋へ行ったのか、あるいは一気に赤石岳へ向かったのか。
私は登山の知り合いもおらずガイドブックのみの知識でルートを決めているので、どこか人とは違うところがあるのだろうか。
 登り始めてから5時間ほど経ち駒鳥池に着く。 雨も小降りになり青空が顔を出して来る。 
雲の切れ目から山が見える。左側が千枚岳で右側は荒川三山のようだ。いよいよだ。

 

俄然元気が出て来て 駒鳥池からは一気に千枚小屋まで駆け上がる。12時少し前、6時間半ほどで着いた。
小屋にはアルバイトらしき若い男性が小屋番。着いてすぐに熱い麦茶を出してくれる。汗を掻き掻き登って来たが、この熱い麦茶が意外においしい。
昼に着いたので更に次の小屋 荒川小屋まで歩けないわけでもないが、やめてここで泊まることにする。

 昼飯を食べて濡れたものを乾かしウィスキーを少し飲んでゴロリ。このゴロリが何とも言えない。
小雨の中を6時間半登って来た疲れが取れていくのを心地よく味わう。隣の人と話をしたり、出入りする人を眺めたり。
グループで来ている人は殆どおらず皆自分と同じ単独行者だ。ボーっとしているうちに夕方になり皆それぞれ工夫を凝らしての夕飯作り。
凝っている人も多いが、僕の場合は荷を軽くするために簡単な食事。今のように保存食品があまり無い時代だったので缶詰類が主体である。

 夕飯を食べ終わり暗くなって来たので寝ようとすると若い小屋番が酒を飲み過ぎたのか大きな声を上げて騒ぎ出し、薪ストーブを煙らせ始める。
小屋に煙が充満して煙いの何の、管理人が酔って騒ぐとは何という小屋だ!アルバイトの学生がこんな山奥で小屋番なんて…淋しいのかな?
特に他の宿泊者は文句を言わず、自分も特に腹も立たず寝袋に潜り込んで寝てしまう。

3日目(8月13日)
 
朝3時半に起き朝飯を食べて4時半に出発。
晴れている。今日は千枚岳・荒川3山・赤石岳を登って百間洞までガイドタイム9時間半の行程だ。
千枚岳(2880m)へは小屋から30分ほど。3日目にようやく山頂に立つことが出来た。
5時丁度朝日が昇り始める。少しづつ明るくなり始めると周りの山々が朝日を浴びて素晴らしい眺め。
明けていく東の空に富士山が裾野まで続くその秀麗な姿を見せてくれる。
さすがに日本一の山。

 

朝日を浴びた荒川三山。頂上付近だけに朝日があたっている悪沢岳。

 

そして左に大きな赤石岳につながり 更には聖岳が奥に見える。

 

千枚岳から危ないガレ場を下りてピークを一つ越えて登るとそこは荒川三山の盟主 日本第6位の高峰 悪沢岳(3141m)。
頂上には写真のように小さな祠があり「悪沢岳」と「東岳」と2枚の標識が立っていた。
国土地理院の地図では荒川岳(中岳と前岳)の東側にある峰だからか「東岳」となっているが、深田久弥の「日本百名山」その他では「悪沢岳」と呼称されている。
大井川の源流西俣の「悪沢」という沢の源頭から付けられたようだ。

 

悪沢岳からの眺めは最高。陽もだいぶ上がって明るくなり周囲の山々もクッキリと見え始める。
これから向かう赤石岳(3120m)はさすがに大きな山容。 北アルプスの山の二つ分あるくらいの大きさ。
背後に隠れているのが聖岳、左の少し低い山は上河内岳か。

 

北へ目を向けると、すぐ目の前に南アルプスではやや孤立している塩見岳(3047m)、そして尾根伝いの右側手前に蝙蝠岳(2865m)。
塩見岳の真後ろに仙丈岳(3033m)、右奥に甲斐駒が岳(2967m)、その右手前に間ノ岳(3189m)、更に右手前に農鳥岳(3051m)。
北岳は間ノ岳の後に隠れて見えにくい。 甲斐駒を除いていづれも3000mの峰々が連なり壮観そのもの。

 

南東の方向には、深く切れ込んだ谷底に前々日歩いて来た大井川林道がかすかに見え、中央が笊が岳方面。
笊が岳から青薙山へかけては、当時はまだ登山道の整備も進んでおらず上級者向けのコースであったと思う。山は高く谷が深い。

 

悪沢岳頂上から荒川中岳へ向かう途中の尾根で西の小渋川方面から朝霧が猛烈な勢いで這い上がって来た。
夜の間に谷に溜まっていた霧が朝日を浴びて上昇し始めた。
その昇って来る霧の中にブロッケン。 東からの陽が自分にあたってその影が霧に映し出され周りが光る。
以前からブロッケン現象は聞いてはいたが、初めての遭遇。 これは凄い!と感激。そしてなるほどこういう時に起きるのかと実体験が出来た。
周りに登山者は誰もおらず一人だけの感動。うまく撮れていないが、その時撮ったブロッケン。

 

悪沢岳から50分ほどで荒川中岳(3083m)。 陽射しも強くなって来る。天気も良く快適な3000m峰の山歩き。
荒川中岳からの赤石岳。大きな山容が目の前に迫る。小赤石岳を経て赤石岳本峰、右側が大聖寺平。雄大。

 

すぐ下に大聖寺平。遥か遠くが伊那方面。
ここから一気に真下の荒川小屋まで下って大聖寺平を登り、更に赤石岳への登り。
どこから見ても赤石岳は立派。南アルプスを赤石山脈とも呼ばれてるが、やはり南アルプスの盟主。
私は今まで100座近くの山を登って来たが、これほど大きく立派な山は他にはないと思っている

 

荒川中岳・前岳(3068m)を過ぎ前岳からの前にのめりそうになる急な岩場を下り続けると緑豊かな草地があり、お花畑もありで気持ちが和む。
更に下って行くと潅木と草地の中に荒川小屋。 風が弱いところにあるせいか 夏の陽射しが蒸し暑く感じる。
荒川小屋には朝の8時半頃。 シーンと静まり返っている。 小屋の中には入らなかったが、誰も居ないような雰囲気。
泊り客はもうこの時刻には出かけてしまっているようだ。
下の写真は 荒川小屋付近から撮った赤石岳方面。少し雲が出始めているが、大きく崩れることはないようだ。いよいよこれから赤石岳の登り。

 

大聖寺平への道を登る。大聖寺平から下の写真は手前が荒川前岳 右側奥が悪沢岳。

 

大聖寺平からの荒川前岳。 荒川大崩壊地、下山途中 前につんのめって落ちそうになり、ヒヤッとした。

 

大聖寺平から赤石岳への登りは時おり薄い霧が流れるが、陽も高くなり地面のガレ石の照り返しもあって暑いことこの上なし。
見通しの良い道なのですぐにと思い勝ちになるが、行けども行けども頂上に着かず。 日陰のない真夏のカンカン照りの道を登り続けた。

今朝歩き始めてから5時間以上経過しているせいか、やや疲れが出て来ているのかも知れない。いつまで経っても頂上に届かない。
この赤石岳は何という大きさだ。 途中山頂かと思うと小赤石岳。ここから更に1キロと思えるほどの先に赤石岳本峰の山頂が。

 大聖寺平から2時間弱でようやく赤石岳山頂。 広々とした山頂。着いたのが11時過ぎ まもなくガスがかかって来て 眺望が霧のために見えなくなる。
せっかくの赤石岳山頂なのに残念。ようやく着いた山頂で昼飯休憩。 当時、小屋はなし。
 ガスの切れ目からこれから下って行くなだらかな百間平が見える。登山者はホントに少ない。時おり単独行者に出会う程度。

 

赤石岳山頂から百間平へは、歩きにくい小さい岩屑のザクザクとした下り。急斜面をトラバース気味に下る。下りはリズムだ、とばかり休まずに一気に下る。
そして百間平。岩屑の荒涼としたところからこの緑多い平坦地に来ると涼しげな微風が流れてホッとする。
今までの暑さも疲れも吹っ飛ぶ。もう小屋は間近なので一旦休憩。

下の写真は 百間平から見た赤石岳南面。山腹を登山道が横切っているのが見える。とにかく大きい山。

 

百間平を出るとまもなく小川が流れているキャンプ地に出る。テントが数張りあって久し振りの賑やかさ。小川で歯を磨き顔を念入りに洗う。
山へ入ると北アルプスでは水が貴重品になる。でも南アルプスでは割と水場が多く水量も豊富。そこで水の補給をするときに顔を洗ったり歯を磨いたり。

 百間洞の山の家は、出かける前のガイドブックには新しくて小奇麗な小屋と書いてあったが、ウソ偽り有り。
汚くて暗くて狭くひどい小屋。 山を背に建っているので冬の雪のせいかも知れない。 あるいは管理の問題か。

便所は目の前の崖っぷちに立って傾いている。おまけに戸が付いていない。
女性の泊り客はいなかったので特に問題なかったが…女性が居てもこんなところでは用を足せないだろう。
翌早朝友達に冷やかされながら用を足していた人が居たが…たいしたもんだ。

4日目(8月14日)
 
翌朝暗いうちから起きて4時半に出発。快晴。
山小屋のすぐ裏から樹林の急な登り。登りきると大沢岳と中盛丸山との鞍部に出る。大沢岳へは寄らずに進行方向の中盛丸山へ向かう。
1時間ほどで中盛丸山(2807m)の山頂。風もなく快晴、朝の空気がひんやりして心地良い。

前日は千枚岳・荒川三山・赤石岳を10時間で踏破したが、体調は問題なく快調そのもの。
 中盛丸山からの今日の山のメインの聖岳(3013m)。早朝なので暗い。左が奥聖岳(2982m)右が前聖岳(3013m)。

 

中盛丸山から小兎岳(2738m)へ30分、兎岳(2818m)へ40分。腰の高さくらいの這松の緑に覆われた稜線上の歩き。
朝日を浴びながら頗る快適。急峻な岩場の岩峰も素晴らしいが、緑に覆われた山歩きも気が安らぎます。
それぞれ2800mほどの標高ですが、南アルプスの南部になるとやはり緑に覆われている。

 中盛丸山からの小兎岳(手前)と兎岳です。山名の由来は姿が兎に似ているからかな?と考えながら歩きました。

 

小兎岳から今登って来た中盛丸山(2807m)。世間ではあまり知られていない山ですが、なかなか形の良い山。

 

小兎岳からの兎岳です。2800mの山稜散歩気分。

 

兎岳からの赤石岳(3120m)。赤石岳のすぐ後に見えるピークは小赤石岳(3081m)。
いづれも3000mを越えているが、北アルプスでは小赤石岳などのような付属的な名前を付けずにもっと独立した名前を付けると有名ピークになるのになあ と。
こういうことは実際にここに来て見ないと分からないこと。
 その背後に荒川前岳・中岳と悪沢岳

 

兎岳からの中盛丸山(2807m)と大沢岳(2819m)。

 

兎岳を7時半に出ていよいよ聖岳への登りのための鞍部に下りる。
あまり歩き良い道ではないが駆け下りて、這松のなかのザクザクした細かい岩屑の道を登り始める。
真夏の太陽が照り付けて暑くなって来る。
山小屋を出てから3個の山を登って来たが、涼しく快調だったのでそれぞれの山頂でも10分程度しか休憩せずに飛ばして来たので、
ここに来てやや疲れが出て来たようです。ジリジリと照りつける日陰のない聖岳の北西斜面をハアハア言いながら登る。

 これは聖岳への登り途中から撮った赤石岳(3120m)。どこから見ても雄大そのもの。これだけ奥深い山だと麓からはなかなか見れない山なのだろうなぁ と。


 

兎岳から2時間ほどかけてようやく聖岳(3013m)山頂へ到着。
喉がカラカラ。当時は水の飲み過ぎはバテると言われていたので喉が渇いてもあまり水は飲まない。
水を飲んだらバテるというのは間違いだった。今は喉が渇く前に飲みなさいと言うくらい。

 聖岳 日本最南の僻遠の3000m峰 そしてまた「聖」という名前が良いですね。崇高な山を連想するが、
本当の名前の由来は、下の沢のヘズリ(トラバース)沢・ヒジリ沢の源頭の山なので「ヒジリ岳」から来ているようだ。

過去の由来はともかくこの山は、南アルプスでも最深部に位置してなかなか近づけない山として、
また姿も前聖と奥聖と長い形になっていて名に相応しい立派な山だ。

残りの行程は聖平小屋に下るだけなので、頂上でゆっくり1時間近くも休憩して周囲の山々を眺めた。
昼近かったせいか 前日の荒川・赤石岳より山頂は人が多かった。

この写真は 更に南の上河内岳(2803m)です。雲がかかって来たが、なかなか美しい山、行って見ようかなという気を起こさせる。
昼になると雲が出始めた。


 

これは聖岳山頂から聖平を見下ろしたところ。
登山道が右に沿って下りて行き薊平を通って回り込んで中央の聖平に至る。
小屋がポツンと見える。

 

聖岳山頂を10時半過ぎに出て上の写真の登山道を下りた。
下りが続くとやや左足が痛むのでゆっくりゆっくり薊平付近のお花畑等を愉しみながら下りたので、聖平に着いたのは12時丁度。
喉が渇いていたので水場でポリタンに満杯の水を汲んで腹一杯飲んだ。脱水症状だった。2リットルくらい飲んだ。一度にこれだけの水を飲んだのは初めて。

 まだ昼だったので、何人かの登山者は昼飯を食べ終わると上河内岳・茶臼岳方面へ出かけて行った。
百間洞の小屋から顔見知りになっていた同じ単独行者も出かけると言う。
分岐から上河内・茶臼岳方面を見ると更に深山の雰囲気が魅力的に見え、
上河内岳・茶臼岳を登って今夜は茶臼小屋泊まりで行こうかどうしょうか迷ったが、ここまでに7時間歩き更にあと3時間余り。
先ほど聖からの下りの時に左足が痛んだので 大事を取って行くのはやめにした。
 
 そして昼飯を食べ終わって聖平小屋でゴロッと横になっていると、突如雷が鳴り出しバケツをひっくり返したような土砂降りの豪雨。
山の雷の音の大きさもさることながら、雨も粒が大きく轟音を立てて降る。
やや暑いくらいでしたので、涼しさを与えてくれる夕立、茶臼岳へ行った人達は、途中でこの雨に会っているのだろうなぁ、行かなくて良かったワイ と。

2時間ほど降り続いた。しかし下山後しばらくしてからこの山域へはあまり来ることがないのだから 
このとき雨が降ろうが無理をしてでも上河内岳・茶臼岳のみならず光岳まで脚を延ばしておけば良かったと 後悔。


 

聖平小屋は、割りと小奇麗な明るい小屋。それほど混まずにまずまずの快適さ。

5日目(8月15日)
 
翌朝3時半起床、4時過ぎに出発。まだ薄暗い道を駆け下りる。
途中 滝見台というところで朝日に映える聖岳と四段の滝を写真に撮る。
ここからの聖岳の眺めは最高。手前が奥聖岳(2982m)左奥が前聖岳(3013m)。

 

立派な山です。四段の滝が見える。なかなか絵になる風景
早朝の薄暗い中での撮影、と写真が古くなり過ぎた。

 

この写真を撮ったあとひたすら下り。
聖沢入り口に着いたのが7時半。ガイドタイム4時間10分のところを3時間ほどで下山。大井川林道の聖沢入り口でしばし休憩

 ここからバスが来る畑薙第1ダムまで12.5キロ:3時間半も林道を歩かなければならない。これが大変。夏の陽射しは朝から照り付けて暑い。
Tシャツと短パンに着替えて さあ 頑張ろう とテクテク林道を歩き出す。30分ほど歩いたところで後からタクシーがやって来る。
先ほど聖平からの下りで降りていた兄弟らしい二人だ。急いでいるようだったが、私のほうが早かったので追い越したのだったが、
その二人が乗っていて便乗しないか?と…歩くのは十分満喫したのであとは早く帰るだけ と便乗する。

 畑薙第一ダムには、アッと言う間に着いて8時40分。歩いていたら早くても昼頃になっただろう。やはり車は便利だワイ。
バスを1時間ほど待つ間 荷物の整理をしたりダムのコンクリートの上を裸足で歩き回ったり。5日間の長い山行をやり遂げた達成感で満足の時間。
バス・新幹線と乗り継いで横浜の自宅に着いたのは夕方の4時過ぎ。

 初めての長い4泊5日の山行、しかも南アルプス最深部の3000m峰の縦走。天気は2日目を除いて絶好の日和。満足の行く登山だった。
 今から30年も前でしたので出かける人も少なくまた当時は山小屋も食事付きや寝具付きは一軒もなく小屋と小屋との距離も離れていて、
一人で行けるだろうかと出かける前は不安一杯だったが、何とか目的を達成して無事帰って来ることが出来た。

 出会う登山者は殆どが単独行者。その単独行者とは、お互い山小屋でも山頂でも一言二言言葉を交わすだけ。皆 山へ孤独を求めに自然を求めに来ている人ばかり。
そして女性も団体も殆ど見かけない。

 この山を歩いてから40年以上経ち その後も幾つか山へ出かけたが、この南アルプスの縦走が、山歩きそのものを最も満喫できたのでないか と思っている。

 昨今 深田百名山登山ブーム、中高年登山ブームとなり、山小屋も食事付き寝具付きになった、とYouTubeその他で紹介されている。
この自然豊かな奥深い山も百名山登山ツアーとかで、団体の人がゾロゾロと出かけて賑わっているのかなぁ と思うと…。

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